ダイスケリチャード イラスト集『気化熱』解説
今回はダイスケリチャードのイラスト集『気化熱』をレビューしていきます。
ダイスケリチャードとは?
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PN:ダイスケリチャード
生年月日:1994年4月14日
出身:滋賀県
下着とスガキヤの五目ご飯が付いてくるセットが好きなイラストレーターで、可愛い女の子とパーカーを描くのが得意。
『気化熱』の特徴
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今回紹介する画集『気化熱』はダイスケリチャード1作目の画集。
ヴィレッジヴァンガードでグッズと一緒に推されていたのでよく行く人は見たことがあるのではないでしょうか。
帯に「170点を超える厳選イラストを一挙収録!」と書いてある通り、ダイスケ氏の作品がとにかくギッシリとつまっています。
後で紹介しますが、作品の傾向も幅広く収録されていてこの1冊さえ持っておけばダイスケリチャードさんがどんなイラストレーターなのか分かると言えるでしょう。
「なんか最近この人のイラストよく見るなあ」となんとなく気になっている人は、ぜひこの記事を読んで購入を検討してみてください。
構成について
『気化熱』では大きく3つのチャプターに分けてイラストが収録されています。
チャプターごとの表題はこんな感じです。
本の構成
①”A GIRL IN HER ROOM"「部屋の女の子」
②”GIRLS GIRLS GIRLS”「色んな女の子」
③"A GIRL AND HER FAVORITE"「女の子と好きなもの」
収録作品
それでは『気化熱』に収録されている作品をチャプターごとに紹介していきます。
①”A GIRL IN HER ROOM"「部屋の女の子」
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何といってもはじめに目を引くのはカバーイラストにもなっている作品「気化熱」。
4ページ分にも及ぶ大作で、ダイスケ氏が「部屋」シリーズで表現してきたことがぎゅっと凝縮されたような作品です。
また裏面にはラフイラストが描かれているのですが、かなり線数が多いので驚かされます。
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ダイスケリチャード作品と言えばこの「部屋」シリーズ。
どのイラストも物量が多いのが特徴で、特に登場人物の自室を描いているイラストは生活感あふれるものになっています。
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どの作品でもただ部屋に物を配置しているだけではなく、ひとつひとつの物が登場人物のキャラクター性を掘り下げるものになっています。
カラフルなイラストが多いですが、中には影をつくることによって空気感に変化を出しているものもあります。
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ダイスケ氏の描く「部屋」は女の子の心の中を映しているようにも見えます。
今の気持ち、趣味、学校のこと、食べたいもの、行きたい場所。部屋に積み上がった物は女の子の頭の中そのものだったりします。
どうしても心の中を描いた作品は重たい雰囲気のものが多いのですが、ダイスケ氏の作品はどこかゆるい空気が漂っているものが多く作品の魅力にもつながっています。
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ダイスケ氏の特徴的な作品のひとつが「部屋」だけを切り取って描いたイラスト。
単にひとつの部屋をキューブ状に描くものもあれば、電話ボックスなどを部屋に見立てている作品もあります。
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また登場する女の子は顔が隠れていることが多く、すべてがしっかり見えるのは稀です。
人は隠れているものほど見たくなるもの。
あえて顔を隠すことで、その子がどんな子なのか周りの情報から想像するようになります。
ダイスケ氏の作品はこうした心理効果を使うことで観る人の視線を女の子から部屋全体へと誘導しているのでしょう。
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このイラスト集を見ていて感じたことなんですが、一度画面上で見たことがある作品でも改めて本で見ると随分印象が違うんですよね。
特に色数が多いイラストが多かったり、淡い色使いで微妙なアクセントを付けているものは紙媒体で見たときの方が映える印象です。
なんとなくイメージとしては、音源で聴いていた時はそこそこだった曲がライブで聴いたらめちゃくちゃ良かったみたいな感じ。
今作では見開き丸ごと1つの部屋になっているページも多いので没入感がすごいです。
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素晴らしいイラストには多くの場合ストーリー性があります。
この部屋シリーズは生活感を出すことで絵にストーリーを見出せるようになっているのかなと思います。
普段登場人物がどんな生活を送っているのか、どんなものを食べているのか、何が好きなのか。
そういった情報が散りばめられているので、自然とイラストとして切り取られた場面の続きが思い浮かぶようになっています。
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部屋シリーズのなかには空が描かれているものも時々あります。
「部屋」というとどうしても籠ったイメージがありますが、部屋から見える景色を描くだけで一気に空気の流れが生れます。
特にダイスケ氏が描く部屋はどれもごちゃっとしているものが多いので、たまに空が描かれているだけでも随分気分が変わります。
あとこのイラストもそうですが、物量の割に色数が少ない作品が多いんですよね。
白と黒+2~3色くらいでまとめられているので、見ていて疲れる感じがありません。
この約束事は他の部屋イラストでも使われていて、かなり意識されている部分なんだと思います。
②”GIRLS GIRLS GIRLS”「色んな女の子」
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「色んな女の子」というタイトル通り、2つ目のチャプターでは様々な服装やポーズの女の子を描いた作品が収められています。
先ほどの部屋のイラストとは打って変わって、こちらのチャプターはシンプルめな作品が多め。
その分チェーンソーのようなインパクトのある描写が増えています。
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描かれる物量が減ったので、今度は色の数が増えています。
色で対比構造を作ったり、蛍光色でアクセントを加えていたりと「遊び」の要素が増えた印象です。
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またインパクトを加えているのは色だけではありません。
背景が無いのでその分ポーズの自由度が上がり、普通ではとらないようなポーズの絵になっています。
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服装がポップなのもおもしろいところ。
セーター服のイラストが多めですが、それぞれに切り替えやパッチワークを付けたりしてちょっと抜けた感じを出しています。
大人しそうな女の子もこうしたちょっと遊んだ服を着ることで可愛さが倍増している印象。
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ダイスケ氏の作品のアイコン的な存在になっているのがリュック。
漢字を入れてみたり謎な模様を付け足してみたりと、思わず見てしまう要素が盛り込まれています。
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先ほどのチェーンソーに引き続きちょっと猟奇的なシーン。
赤い水溜まりと歪んだボストンバックから前後のストーリーが浮かんできます。
それにしてもスコップは攻撃にも使えるし穴も掘れるしで最強ですね。
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基本の服装は制服にリュックといつも通りですが、しっかりとハロウィン仕様にしています。
このリュックも普段使っていたら中々にインパクトありますが、この時期ばかりはカッコよく決まっています。
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ハロウィンイラストその2。
羽に棺にとさっきのイラストよりも気合の入ったコスチュームです。
とにかく棺桶のデザインがカッコよすぎます。似たようなキャリーケース作ったらめっちゃ良さそう。
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ダイスケ氏の描く女の子はよく寝ます。
部屋のイラストでは机に突っ伏していましたが、こちらではうつ伏せ。
スニーカーもリュックも身につけたままなところが、何もかもに疲れ切ってる感が出ていてダイスケさんらしい作品。
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チェーンソーに始まったのでチェーンソーで締めにします。
このチャプターでは血痕の表現が度々ありましたが、いずれも模様として描かれている分生々しさを上手く消しています。
それにしてもどの作品もそうですが、満身創痍感を出すのが本当に見事だなあと感じます。
ダイスケ氏がそこまで追い込まれていないといいのですが。。
③"A GIRL AND HER FAVORITE"「女の子と好きなもの」
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可愛さの塊。そんなチャプターがこの3つ目のチャプターです。
とにかく画面を可愛さで満たすために可愛いものをつめ込んだ作品になっています。
先ほどの2つ目のチャプターではスタイリッシュにキメている女の子が多かった印象ですが、こちらでは日常感が増しているからかちょっと抜けたイラストが増えています。
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ペンギンの次は犬。
戌年ということで描かれたイラストですが、リュックを背負った柴犬がなんともダイスケさんらしい雰囲気を醸し出しています。
どうしても新年のイラストはモチーフが決まっている分似たような絵になりがちですが、パーカーやリュックに「干支」「日の丸」「鳥居」「富士山」といったモチーフを落とし込んでいます。
あと丸眼鏡にキャップって可愛すぎますね。
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「かわいい」にはスイーツも欠かせません。
ケーキのほかにもパンケーキやどら焼きなど様々なスイーツと女の子のイラストが収録されています。
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クールな女の子にちょっと残念な要素をプラスするのはダイスケ氏の作品ではすっかりお馴染み。
ただ寝ているだけなのに、宙に食パンを浮かべるだけでアホの子っぽくなるのは不思議です。
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ギター持ってる女の子ってなんでこんなに雰囲気が出るんでしょう。
このチャプターではいくつか弦楽器を持った女の子が描かれているのですが、どの作品も普通とは違う雰囲気が漂っています。
おもしろいのはイラストごとのギターの扱い方。
横に立てかけてみたり、抱いて寝てみたり、練習してみたりと描き方次第で女の子の性格がちょっと違って見えます。
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こちらは先ほどとは違って最高にカッコいいギター少女。
破片やグラデーションのエフェクトを入れることで、音色が聴こえてきそうな臨場感を演出しています。
またツインテールが音の波のように揺れているのも「エモさ」を掻き立てられます。
ギターと女の子は画になるのでよく描かれるテーマですが、見た目のカッコよさに留まってしまうことも多い気がします。
イラストで音を表現するのは難しいですが、テレキャスターの尖った音を直球で表現していく姿勢はさすがダイスケリチャードさん。ちょっとカッコよすぎますね。
まとめ
というわけでダイスケリチャードさんのイラスト集『気化熱』について紹介してきました。
今ノリにノッているイラストレーターさんの初画集ということで、かなり作品の勢いがつまったイラスト集になっていると感じました。
この画集の魅力は何といっても作品の良さですね。
特に部屋シリーズなど情報量の多い作品は実際に手に取って観るとかなり没入感がありました。普段スマホでイラストを見ている人は驚くんじゃないでしょうか。
またこの画集用に描き下ろされたイラストも多数収録されています。
どれもダイスケさんらしい魅力的な作品ばかりなので、このブログを読んで気になった方は買って後悔することはないと思います。
そういえば何気に巻末に付いているイラストごとのコメンタリーの興味深いものになっています。
SNSだと中々作者が自分の作品について語ることはなかったりするので、これも貴重ではないでしょうか。