イリヤ・クブシノブ画集『MOMENTARY』レビュー(後編)
前編のおさらい
さて『MOMENTARY』の後編の紹介していくわけですが、その前に前編でどこまで紹介したのかを軽く振り返っておきます。
前編をまだ読んでない人はこちらをどうぞ。
【おすすめ画集解説】イリヤ・クブシノブ画集『MOMENTARY』レビュー(前編)
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本の構成
①「表情」
②「ストーリー」
③「SFと少女」←後編はここから
④「日本の風景」
⑤「スケッチ」
⑥「イリヤ・クブシノブの世界観」
前編で紹介したのがこのチャプター区分の①と②の部分。
後編では③~⑥まで紹介していきます。
③「SFと少女」
前半では「とにかく女の子を魅力的に描く」というテーマの作品が多く、動的か静的かの違いはあれど基本的には女の子がもっとも映える一瞬を切り取ったものがほとんどでした。
後半では「女の子を魅力的に描く」というテーマは下地にありつつも、それに加えてイリヤ・クブシノブがどのようなジャンル・作家に影響を受け、どのような作品を生み出してきたのかに迫る内容となっています。
3つめのチャプターである「SFと少女」では、様々なSF作品の影響を受けながら描き出されたイラストが収められています。
特質すべきはアーマードスーツを始めとするSFに欠かせないアイテムに対する描写の緻密さ。
イリヤ・クブシノブがモスクワ時代からどれだけのSF作品に触れてきたのかが垣間見えるようなイラストになっています。
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④「日本の風景」
このチャプターではイリヤ・クブシノブが日本の風景にインスパイアされて作り出した作品がまとめられています。
日本人とは違った視点で描かれた日本の景色は新鮮で、シーンの切り取り方などからもイリヤさんが何に興味を惹かれたのかが伝わってきます。
また「なぜロシア人のイラストレーターが日本で活動しているのか」という問いに対する答えにもなっているチャプターにもなっているため、イリヤ・クブシノブという作家を知りたい人には是非目を通してもらいたい部分になります。
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⑤「スケッチ」
5つ目のチャプターではイリヤ・クブシノブが書いてきたスケッチがまとめられています。
ごく一部ではありますが、スケッチからイリヤさんがどのように練習しているのかが分かるようになっています。
またかなり原画を再現した印刷になっているため、わずかな線の強弱も感じられます。
ここでは今作に収められているスケッチではありませんが、一部公開されているスケッチを紹介していきます。
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⑥「イリヤ・クブシノブの世界観」
いよいよ最後のチャプターです。
今作のコメンタリーでも語られていますが、イリヤ・クブシノブ作品の特徴は登場人物の感情を豊かに描き出すことで、観る人にその前後の物語を想像させるところです。
言いかえれば「キャラ立ちしている」とも言えるでしょう。
この最後のチャプターではイリヤ作品の中でも特に「感情」や「世界観」を感じさせる作品が収められています。
どれもが独立した世界観を持っており、イリヤさんの描いてきた世界観の多様性が感じられるチャプターです。
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全編まとめ
全チャプターの紹介が終わりましたので、『MOMENTARY』全体のまとめを書いていこうと思います。
今作というよりイリヤさんの特徴になるのですが、とにかく多作です。
『MOMENTARY』をブログで紹介するにあたって、一通りイリヤさんの作品に目を通してみましたが本当に作品数が多いです。
これだけ作品数が多いとどんなにクオリティが高い作品でも新しい作品の中に埋もれてしまいがちです。
そのため膨大な作品の中から本として残したい作品を作者自らが厳選したというだけでも、今作は価値のある画集だと思います。
またチャプターが6つに分かれているため、イリヤ・クブシノブという作家を知る上でも最適な一冊になっています。
近年では多くのイラストレーターがSNSを一つの拠点として活動していますが、SNSの性質上どうしても断片的な情報しか伝わらないという欠点もあります。
そのため、「インスタで見つけたけど、この人ってどういうイラストレーターなの?」といった疑問が出てきても中々作家さんについて深く知ることはできません。
今回紹介した『MOMENTARY』はそうした「イリヤ・クブシノブを知りたい人」や「イラストを深く楽しみたい人」のニーズに応えた画集です。